近赤外マルチバンドによる肌検出

1.はじめに
 近年、近赤外光を用いた研究が多くあり、医療、防犯など様々な分野において研究がされています。その一例として、近赤外光を用いた肌検出の手法が挙げられます。人間には知覚できない近赤外光を用いることによって、利用者に負荷を与えることなく肌の物質を検出できるというメリットがあります。

2.基本原理 
Q.なぜ近赤外光で肌が検出できるのか?
下に近赤外光における人間の肌と髪の分光反射特性を示します。

肌の反射特性に注目すると、970nm付近の反射率が低いことがわかります。 この特性を用いるために970nmを挟むようにして870nmと1050nmの波長を用いて、肌を検出します。

3.撮影システム(IR3カメラ)  
IR3カメラはプリズム分光による3CCDカメラの原理を用いることにより3波長の画像を同時に取得可能なカメラです。カメラの構造として、近赤外透過レンズを通った光は、各プリズムの出口に付けられたバンドパスフィルタにより各波長成分が抽出され、3つのCCDに撮像されます。

4.肌検出結果
実際にカメラで撮影した画像から肌を検出した画像を示します。 左から870nm、970nm、1050nmの波長で撮影した画像となります。


次に、870nmから970nmを差分した画像と1050nmから970nmを差分した画像を示します。

870-9701050-970

肌において、870nmと1050nmは970nmと比べて反射率が高いことから、870nmと1050nmの画像の輝度値は970nmの画像の輝度値より高くなるので、 2枚の差分画像において輝度値が正の値であれば肌の特性を持つとみなすことができます。 最後に2枚の画像から肌を検出した画像を示します。



このように、肌が検出できていることがわかります。

5.本手法を適用した例
・運転者支援システム
ユーザーインターフェースへの応用
・ジェスチャによるロボット操作