現在、様々な分野において画像処理が応用されている。
食品分野においても、食品のおいしさを定量化するために、また、食品の品質、鮮度を管理するために、画像処理の技術は重要になってきている。
食品のおいしさは、素材そのものの品質、鮮度はもちろん、調理過程も大きく関わってくる。
本研究では、天ぷらの調理を解析することを目的としている。
実際に天ぷらを揚げている様子を撮影することで、天ぷらがどのような挙動をするのかを観測した。
・撮影装置
撮影動画を見ると、揚げはじめから揚げ終わるまでの過程において、天ぷらを揚げる際に発生する気泡の様子、衣の状態に変化がみられた。
天ぷらの揚がり具合、またその時に発生する気泡や衣、波の状態から、天ぷらが揚がるまでを初期段階、中期段階、最終段階の段階に分けて、各段階におけるモデルを構築した。
初期段階のモデルは、天ぷらを入れた直後の状態であり、細かな気泡が天ぷら全体から激しく出現する。
投入してからある程度の時間が経過した中期段階のモデルは、初期段階のモデルに比べ、衣の表面は固くなり、大きな気泡を発するようになる。
油から取り出す直前の状態である後期段階のモデルでは、衣は固まり、出現する気泡もさらに大きくなる。
衣の形状は舌触りや食感という要素を含むため、天ぷらのおいしさに直接的に関わってくる。
一般的には「サクサク」している衣がおいしいとされている。
衣の形状とは、主に衣に発生する凸凹の大きさやその分布具合であり、それがおいしさに関わってくると考えられる。
そこで、様々な温度で揚げた天ぷらの衣を採取し、その画像から、衣の凹凸の大きさやその分布を解析した。
図からわかるように、180℃で揚げた衣は、他の衣に比べ、衣全体に一様に凹凸が分布している。
このように全体に一様な凹凸が存在している衣が、サクサクしておいしい衣の条件であると考えられる。
本研究により、天ぷらの調理過程や、衣の形状を解析することで、「天ぷらがおいしく上がる水分蒸発家庭」や「おいしい衣の形状」を解析することが可能となった。
将来的には食用油の評価指標や、上がった天ぷら衣のおいしさの評価指標などとして、揚げ物調理における幅広い応用が期待できる。