概要
木目の官能検査を自動化し、判定とともに人が理解できる判断根拠を生成する研究です。熟練検査員へのインタビューから、自然な発話を整理したTranscriptデータと、判断過程を段階的に表すCoC(Chain of Causation)データを構築しました。これらを用いて視覚言語モデルを学習し、木目画像の良否判定と理由生成の性能を比較します。
研究背景
視覚による官能検査では、色合いや模様などの感性的な特徴をもとに品質を判断します。そのため検査員ごとに判定がばらつきやすく、基準の統一や検査員教育が難しいという課題があります。
木目の評価には、縞の濃さや材色のコントラストといった局所的な特徴だけでなく、配置バランスや有効領域の量など、画像全体の特徴も関わります。そこで本研究では、画像と言語を同時に扱える視覚言語モデル(VLM)を用い、判定結果だけでなく「なぜそう判断したか」まで説明できる仕組みを目指します。

研究内容
熟練検査員1名に208枚の木目画像を提示し、良品50枚、不良品158枚について良否判定と判断根拠を収集しました。さらに、判断の根拠となった領域を画像上に記入してもらい、言語情報と位置情報を同時に記録しました。
検査員の自然な発話を整理したTranscriptデータに加え、判断過程を段階的に表すCoCデータを作成しました。CoCデータは、最終的な良否判定を表すDecision、判定に関わる木目の特徴を列挙するCausal Factors、両者のつながりを文章で示すDecision-Factor Linkingの3要素で構成します。

TranscriptとCoCのそれぞれを用いてQwen3-VL 8Bをファインチューニングし、木目画像に対する良否判定と判断根拠生成を行いました。評価には4分割交差検証を用い、良否判定をMacro-F1とF1-score、判断根拠をROUGE-L、BLEU-1、Sentence-BERT Similarityで比較しました。
研究成果
ファインチューニングを行わないBaseline、自然な説明文を用いるTranscript、判断過程を構造化したCoCを比較しました。CoCは良否判定と判断根拠生成のすべての指標でTranscriptを上回りました。

生成された判断根拠の例

熟練検査員の判断を構造化して学習に用いることで、木目画像の良否判定だけでなく、判断根拠の生成性能も向上しました。特にCoC条件では、表現の揺れを抑えながら画像特徴と最終判断の関係を学習しやすくなったと考えられます。
今後は、木目画像を用いた事前学習によって特徴の識別性能を高めるとともに、検査員が記録した注目領域の位置情報をCoCへ組み込み、局所・大域特徴と判断根拠の対応をより明確にします。
発表文献
岡田壮央,高井鉄馬,加藤邦人,寺田和憲,篠井暖,塩澤安生:「構造化判断根拠データを用いた視覚言語モデルによる木目官能検査の自動化」,第29回画像の認識・理解シンポジウム(MIRU2026),IS3-191,2026.