概要

視覚言語モデルに木目画像を見せ、熟練者に近い官能評価と、その判断理由を文章で説明する技術を研究しています。

研究背景

木材の外観検査では、節や割れの有無だけでなく、木目の流れ、濃淡、まとまりといった人の感覚に関わる品質が重視されます。このような官能評価は、単純な寸法測定では表せず、熟練者の経験に支えられています。

一方、検査員は日常作業で合否を直感的に判断しており、理由を毎回言葉にするとは限りません。学習用データを作る際にも、合否だけでは判断基準がモデルに伝わりにくく、説明のない自動判定は現場で受け入れにくいという問題があります。

評価者が木目画像を品質順に整理する基準収集の全体像>

図1 木目画像を品質順に整理し、合否基準を収集する全体像

研究内容

まず、評価者に30枚の木目画像を提示し、品質の高い順に5群へ並べてもらいます。合否の境界にある画像を比較し、「色が均一」「濃い筋が目立つ」「木目の流れが乱れている」など、普段は暗黙的な評価基準を言葉として収集します。その後、各画像の合否と判断理由を再確認し、学習データを構築します。

木目官能検査と判断根拠生成を行う視覚言語モデルの構成>

図2 局所特徴と大域特徴を統合する提案モデル

モデルには、画像と文章を同時に扱える視覚言語モデルを用います。通常の画像特徴は全体的な印象を捉えやすい一方、細い筋や小さな色むらを見落とすことがあります。そこで、SigLIPの複数の中間層から得る特徴に、CNNが捉える局所特徴を統合し、木目全体のまとまりと細部の両方を見られるようにしました。

入力された木目画像に対し、モデルは合否だけでなく「濃い縞が局所的に集中しているため不合格」のような判断根拠を生成します。正解文章と一字一句同じかではなく、評価者が重視した要因を説明できているかを確認します。

木目官能検査の判断結果と根拠生成の比較>

図3 品質判定と判断根拠生成の結果例

判定結果と理由を同時に示すことで、検査員はモデルが何を見たかを確認できます。技能継承、評価基準の共有、検査結果の説明性向上に役立つ技術です。

発表文献

[1]吉田温登, 加藤邦人, 篠井暖, 塩澤安生, 寺田和憲, 林良和:「木目官能検査自動化の精度向上に向けた画像特徴抽出手法の改善」, ViEW2024, IS1-15, pp.251-258 (2024).

[2]Haruto Yoshida et al.: “Wood Grain Sensory Evaluation and Rationale Generation Using Vision-Language Models,” IW-FCV2025 (2025).