研究紹介


私の研究のメインは、パターン認識です。そして、パターン認識などの画像処理を
用いて、いかにロボットを制御するか?どのような面白いロボットができるか?とい
うことを目標としています。実際のフィールドとして、RoboCupを行ってきました。最
近は、ロボ研のNewFaceの”Nomado”を使って、新しいロボットを作ろうとしています。
ここでは、実際にどのようなことをしているのかを紹介していきます。



RoboCupにおける研究


-はじめに

近年、自律移動ロボットの研究はさかんに行われており、巡回警備ロボット、在宅介護、危険地帯や
災害現場での調査など様々な分野への応用が期待されており、今後我々の社会にも大いに影響を
与えると思われる。
 自律移動ロボットを用いた研究の場のひとつとして、RoboCupが開催されている。RoboCupの実機
リーグは、自律移動ロボットを用いたサッカーのゲームを通して、動的環境における、人工知能、マル
チエージェントによる協調、リアルタイム推理など様々な研究の場である。
ロボットが自律移動を行うには、周囲の情報を獲得し、状況を理解する必要がある。そのために用い
られるセンサには様々なものがある。その中でカメラを用いる方法は、一度に多くの情報を得ることが
でき、低コストでシステムの構築が可能であるなどといった点からよく用いられる方法のひとつであり、
RoboCupでも一般的に用いられている。しかし、RoboCupにおいてロボットの認識、追跡手法につい
ての議論はまれであり、安易な方法をとる場合が多く見受けられる。
 RoboCup小型リーグにおいては、ボールはオレンジ色、ロボットのチーム認識のためのマークとして
黄色または青色のピンポン玉をロボットの上部に取り付けるというようにルール上で色が指定されてい
る。そして、カメラ画像から自分の状態やボールやロボットの位置関係などのフィールド上の状況を理
解する方法として、色特徴のみを用いたものが一般的である。色特徴は処理を高速におこなうことが
できるというメリットがありリアルタイム性という点において有効である。しかし色特徴は環境の影響を
受けやすく、特に照明環境の影響を受けやすいという問題点がある。また、認識対象の材質などにも
影響を受ける。そのため、試合環境によって検出精度が落ちたり、試合毎に色の設定を必要としたり
といったデメリットもあわせ持っている。このことから、認識する色の数が増えるほど必要な情報が得に
くくなると思われる。また実世界への応用を考えた場合、環境の変化にロバストな認識手法が必要と
なる。
 そこで、本システムでは色特徴のみではなく形状特徴も用い、明るさの変化にロバストなビジョンシ
ステムを目指している。本システムは、CCDカメラと画像処理などの知的処理をおこなうコンピュータ、
ロボットに命令を送るための送信機、無線信号によって制御されるロボットで構成されている。ロボット
とボールの認識には、形状特徴として4方向面特徴を用い、色特徴としてLUV表色系の色を表すU、
V値を用いた。これらの特徴を用いてロボットの位置やチームの認識、そして味方ロボットの姿勢検出
や個体識別を行った。また、ボールの位置の認識を行った。ここでは、試作したビジョンシステムの概
要とロボットとボールの認識方法、そしてその手法を用いた認識実験について紹介する。

−マークについて

 RoboCup小型リーグにおいて、ロボットの認識のためにロボットにマークを
取り付けることが許されている。そこで、本システムでは下図に示すようなマー
クを用いロボットの認識をおこなう。これらのマークは、形状パターンとひとつ
の色で構成されており、360度回転をしても重複しないものである。今回マー
クの色には薄紫色を用いた。この色は、Luv表色系のUV色空間上でボール
やピンポン玉など他の色の距離が離れている色として選択した。これらのマー
クは、ロボットの上部に取り付ける。また、ルールで決められたチーム認識用の
ピンポン玉はこのマークの中心に取り付ける。



−ロボットのチーム、姿勢検出

 RoboCup小型リーグにおいて、ロボットはチーム毎に青色または黄色のピンポン
玉を取り付けることが決められているため、本システムでもこれを利用する。まず、
処理の高速化やノイズの影響を防ぐためにロボットの候補領域を抽出する。ロボ
ットが動いていない状態でも抽出できるように背景差分を用いた。そして、抽出さ
れた領域に対して、ピンポン玉の色の検出をおこないチームを識別する。
 ピンポン玉によって検出された自チームのロボットの領域に対して、チーム認識
用のピンポン玉とマークの色の重心を計算し、各色の重心を結ぶベクトルを求め、
ロボットの姿勢を検出する。

−形状認識

形状辞書として、マークの線パターンを水平、右上がり、垂直、右下がりの
各方向に向けた濃淡画像から方向検出フィルタを用いて、それぞれ水平
方向面、右上がり方向面、垂直方向面、右下がり方向面の4方向面を作成
する。辞書の大きさは24×24である。
 ロボット領域に対しても、同様に方向検出フィルタを用いて4方向面特徴
抽出する。そして、形状辞書とのマッチングにより類似度を計算し、形状パタ
ーンを抽出する。方向面は、それぞれの方向のエッジ強度に応じて濃淡値
を特徴として持つ。今回は、エッジ強度を256階調の濃淡値で示している。
 また、4方向面特徴を抽出する際、マークの縁のエッジによりマークの形状
パターンの抽出に影響を与えてしまう。そのためロボットの候補領域からさらに
マークを切り出し、円のモデルを当てはめマークの縁のエッジの影響を軽減
している。形状辞書と入力画像に対する形状特徴の抽出例を下図に示す。

 

入力画像


方向検出フィルタ



四方向面特徴


ノイズ除去・正規化・ぼかし処理
        +
      マッチング


形状辞書




−ロボット識別

 ロボットの個体は、下図に示すように検出された形状パターンが検出された
ロボットの姿勢に対してどのように対応しているかを調べることにより、識別して
いる。マークは上方向をロボットの前方とする。




☆Nomado

製作中



Back